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感想『ニコマコス倫理学』(上・下)

 

ニコマコス倫理学〈上〉 (岩波文庫)

ニコマコス倫理学〈上〉 (岩波文庫)

 

 

ニコマコス倫理学〈下〉 (岩波文庫 青 604-2)

ニコマコス倫理学〈下〉 (岩波文庫 青 604-2)

 

 

  • 個人的評価

 面白さ:☆☆☆☆☆

 難易度:☆☆☆☆

 有用性:☆☆☆☆

 

 アリストテレスは、いかなる活動も「善」を希求しており、また大きな営みの目的はそれに従属する営みの目的よりも望ましいとする(例えば馬具製作は騎馬に、騎馬やその他全ての軍事は統帥に従属し、統帥は勝利を目的とするという具合に)。この場合人間的な営為の全てを覆う如き目的が「最高善」つまりは「幸福」に他ならず、そしてそれは人間的な卓越性ないしは徳に即しての魂の活動であると定義した。

 

 更にアリストテレスはこの卓越性(徳)を「知性的卓越性(徳)」と「倫理的卓越性(徳)」とに区別し、後者は「中庸」によって保たれると規定する。そこから各種の倫理的徳について述べ、続いて正義と知性的卓越性(徳)の分類に触れたところで上巻は終了する。下巻では抑制・愛・快楽の各論を説明し、最後に『政治学』への橋渡しを行うことで本書は締め括られる。

 

 自分の遅読によるためか、読了までに丸1ヶ月かかってしまった。しかしこれは上下巻という分量の多さに由来する部分が大きく、むしろ哲学書としては比較的平易な部類に入ると思われる(無論難解な箇所もいくつかあるが、全体としての理解を著しく損なうほどではないと自分は考える)。また下巻の解説には、本書の編集に際して不自然に巻ごとの長さを調節したことによる内容理解への弊害も書かれていたが、一定のペースで読み進めていた自分は左程気にならなかった(もちろん個人差はあるだろうが)。

 

 今から2300年も前に書かれたものではあるが、それだけの長い時を耐え抜いてきた故か今日でも示唆に富む点は数多く存在する。個人的には中庸を目指すことの大切さや、各種の徳に加えて正義・愛について書かれた項目は非常に参考になったと感じている。一方でやはり時代錯誤的な認識も随所に見られるが、この辺はあらかじめ割り引いて読めば済む分さしたる問題ではないだろう。

 

 ところで本書を読んでいる際に触発された点として

  • 第二巻第六章にて「中庸の過超や不足も存在しないのである」と書かれているが、本当にそうなのか

 →中庸の過超や不足は存在しないのか - 厭世と閑暇の庵

  • 第八巻第三章にて有用のための愛・快のための愛・善きひとびとの愛が説明されており、それに基づく自己の精神状態の分析

 この2点があり、それぞれに関して記事を書くことを当面の目標としてこの感想文の結びとしたい。